机を整理していると、手書きの請求書が出てきました。
以前訪れた料理屋さんのもの。お会計をお願いすると、えらく時間がかかるので「どうしたんだ?」と思っていたら、手書きメッセージの請求書を持ってこられました。ちょっと肩すかしでした。小泉純一郎なら間違いなく「感動した!」と叫んでいます(笑)。
あれだけイライラしていた自分が恥ずかしいとさえ感じる、そんな体験。もちろん、お店からの丁寧な対応によるところもありますが、それだけではありません。"もらうはずのない"ものをもらったという、嬉しいショックです。
○○を中心にデザインする。
人をひきつけ、豊かな気持ちで理解、行動してもらうこと。デザインの大きな使命だですが、みな「○○を中心に」考えています。さて、○○に何が入るでしょう? 続きを読みながら考えてみてください。
バラを片手に、熱い胸のうちを一晩中でも語る、なんていう「モテ」のイメージといえばイタリア系。しかし、海外経験も豊富な知人の一人は、元来日本人はラブレターが上手いはずといいます。理由は、気遣いに長けているから。
そもそも、わたしたちは自分に関心を抱いてくれる人が好きです。ところかまわず大声で叫んでくれるのもいいでしょうが、それとなく気づかせてくれる人に感動するものです。こちらが欲しているときにそっと手を差し延べてくれる。関心事を先回りして解決してくれる。相手への気遣いにことかかない日本人には間違いなく得意な分野だ、と知人は指摘しているのです。
さて、冒頭の「○○を中心に」には何が入るか、もうおわかりですね。「相手」です。
お薦め書籍:人生を決めた15分 創造の1/10000
カーデザイナーでは日本で最も有名なひとりとして知られる、奥山清行さん。創造への哲学とともに海外と日本での差なども興味深い。ドラマティックに書かれているところがオモシロい。
おもてなし精神+ユーザビリティノウハウ
世界一といわれる日本の顧客サービスも、根底に流れる大きなひとつは「相手」を想った"おもてなしスピリット"でしょう。1分の遅れでも丁寧に解説してくれる列車の接続案内。いたれりつくせりのタイミングで案内してくれるカーナビ…、身の回りにはおもてなし精神があふれています。それらは同じ感情を暗黙的に抱ける、いわゆる共通感覚が通じる世界なら問題ありません。
最近、エレベータに大きな鏡をつけるところが増えました。その理由をご存じですか? 車いすの方が前向きに入り、降りるときには後ろ向きに出なくてはいけない。その際、車いすの後ろに人の有無がわからなかったらどんなに不安でしょう?
自分と違う立場への理解が強く求められる現場で発達するもの、それがユーザビリティです。車イス生活をしない人には感覚的にわかりにくいことを考える仕事です。おもてなし精神に、立場の違う方へのユーザビリティノウハウが加わればどんなに豊かでしょう。
「相手」を考える素養
サービスはもちろん、高性能、高品質を誇るMade in Japan。一方、日本の管理職のレベルはあまり優秀とはいえないとも言う声も聞きます。でも私が思うのは、彼らが積極的に怠けたからではない、勉強する機会がなかったからではないかということ。つまり、やや乱暴ですがブルーカラーが優秀すぎてホワイトカラーが育たなかったという推測です。
Web業界を振り返っても、やはり優れたディレクターは"おもてなし素養"を持つクリエイターのいる場所からは生まれてこないと強く感じます。けれども、以前にも増してWebは私たちの生活に様々な顔で入り込んでいます。「Webで調べる」「Webで買う」とは言っても「ポスターで調べる」「ポスターで買う」には違和感があるでしょう? Webデザインのフィールドの拡さと難しさはたしかにあり、クリエイターの素養だけでは限界がある所以です。
クリエイターの素養だけでは限界がある世界。そこでは、余計におもてなしの素養を持った有能なディレクターが求められます。ディレクターが不足しているのは、そうした相手を慮り行動できる素養が伝えにくく、学びにくいから。これがテクニックならば、学びやすいし、伝えやすい。目の前でも見せやすいのですが。。。
お薦め書籍:リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間
人のモチベーションに焦点をあてた交流哲学に、少なからずデザインのヒントも隠れているのでは? 新しくはない本ですが、サービス業に携わって無くとも読んでおきたい一冊。
冒頭の領収書。ふつう、領収書で感動するなど考えませんよね。意外性と心を動かす演出。そんなところに、クリエイティブの、仕事へのヒントがたくさん隠れている気がしてきます(よね?)。それでは今月はこの辺で。
関連リンク
じんわり効く、漢方薬系Web談義 バックナンバー
人生を決めた15分 創造の1/10000(Amazon)
リッツ・カールトンが大切にする サービスを超える瞬間(Amazon)
井浦むつおさんプロフィール
印刷デザイン会社に勤務後、同僚とWeb構築会社「ヒキダス」をスタート。Web担当者の悩みをひきだし、参謀役になれればと願う。Webマーケティングからデザイン、システムまでオールラウンドで引き受け、小さくてもエッジの効いた会社を目指している。
http://www.hikidas.com/
このエントリーをブックマークする
このエントリーにトラックバックする
このエントリーのトラックバックURL
http://withd.jp/mt/mt-tb.cgi/2668
WEBの新着記事
2009.06.29
行動につながる情報を見つけ出す
2009.06.25
人柄のデザイン
2009.06.25
Web標準と接する際の3つの留意点
2009.06.18
3年間ありがとうございました、のブックマーク放出
2009.06.11







