2008.06.06

“言葉”ではつかめない

イメージ:“言葉”ではつかめない

じんわり効く、漢方薬系Web談義 ♯18
井浦むつお(ヒキダス)

バックナンバー

いきなりですが、次の文章を読んでください。

変更条件が受理されないと判断された場合には、あらかじめ定められている営業に関する義務を有しない意思をもつとみなすことがあります。

変更条件が受けられなかったらどうなる? 営業するのでしょうか? 意思をもつと“みなさなければ”いいのでしょうか? わかりにくい文章ですね。

なぜわかりにくいのでしょう、というのが今月のお話です。

説明が悪いのではない、言葉が悪いのだ。

先日、喫茶店でなぜ仕事を辞めるのか必死に話しこんでいるカップルがいました。彼女は腕を組んで「わからへん、わからへん!」の連発です。彼の顔にはこう書いてありました。「おれの行動を誰か説明してくれないか…」

わたしたちの行動は時にとても複雑です。矛盾を感じることもあります。その差を埋めるために必死に説明を試みます。説明の善し悪し、もちろん多分にあります。しかし、今日はひとつ、言葉のせいにしてみましょう。

(A)わたしは、雨がふったから、傘をさした。

(B)わたしは、雨がふったから、傘を閉じた。

Aはすんなり読めたはずです。しかし、Bは「?」が浮かびますね? 詩的なアイロニーさえ感じます。さらに....

(C)わたしは、雨がふったから、眠った。

もはや「なんで?」の世界。考えるのがしんどいですね。

わたしたちの行動はそんなにわりきれるものではありません。説明すると論理が通らないことは案外多くあるものです。“素直に”感じたことを“正しく”言うと通じないことがある。言葉が悪いのではなく、そもそも通じないと考える。なんとなくあってそうにはみえてもあってはいない。百戦錬磨のプロライターでも解決できない問題なのです。

世界観をつかむのが上手い人

文章として論理が通らずともやりとりに支障ないこともあります。たとえば日本独特のわび、さび。「枯れてるのが、いいんよねえ」、枯れが良いという感覚がある人にはそれだけで通じます。さらに、みなが抱きやすい感覚で話せればそれだけ通じやすくなります。

たとえば.....

本当に好きだから、つい“嫌い”と言ってしまうんよね。

好きだから→嫌い。生真面目なロボットならエラーを出すところです。でも、たいていは「わかる、わかる」と続きます。世界観ですね。話が上手な人は言葉を知っているのではなく、相手の常識感と世界観をとらえるのが上手い人です。

お薦め書籍:シンプリシティの法則

シンプリシティの法則シンプリシティがなぜ、どのようにデザイン価値を産むのか。法則としてあげられているのは一見ごく当然にみえるもの。しかし、なかなか手に入りにくいもの。軽やかに指南してくれながら奥が深い本です。

デザイン価値を産むために。じわじわ効く漢方薬的な一冊。

“望ましい未来”を語る

これまで、クライアントと話すのが苦手だというデザイナーさんに何人もお会いしました。デザイン受発注の現場で、言葉で印象を語り合うことは少なくありません。

  • おとなしいのは、うちのトーン&マナーにあわないから…
  • もっとスピード感がほしい…

お互いの常識感と世界観があるとすぐに決まることも、できないと堂々巡り。苦しいものです。最後は、実際にデザイン作業を行う人にふりかかってきます。伝える意志はとても大切ですが、話すこと自体はそれほど大きな問題ではない。そう考えることも重要です。場合によっては、相手の説明が悪いと思うのも正しい勇気です。

前回トライアンドエラーの大切さに触れましたが、わたしたちは以前よりずっとシミュレートしやすい環境にいます。ネットをたたけば、おびただしい数のサイトが出てきます。。一サイトは百聞にしかずです。

ネットを前にしたユーザの反応は正直です。気に入れば買う、使う、利用する。気を遣ってくれたりはしません。決して説明が通るものが支持されるわけではない。だからこそ、説明が通るものではなく、受け入れられる世界観を手に入れたいと誰しも思います。わたしたちの行動は説明しにくい。言葉だけがキャッチアップできるわけではないから。そう考えればよいのです。

事例を集めておく、その上で図解する、なとなどちょっとしたシミュレートは何万語よりも将来を正確に語るときもあります。望ましい未来を指摘しているかもしれません。

(ヒキダス 井浦むつお)

関連リンク

じんわり効く、漢方薬系Web談義 バックナンバー
シンプリシティの法則(Amazon)

井浦むつおさんプロフィール

印刷デザイン会社に勤務後、同僚とWeb構築会社「ヒキダス」をスタート。Web担当者の悩みをひきだし、参謀役になれればと願う。Webマーケティングからデザイン、システムまでオールラウンドで引き受け、小さくてもエッジの効いた会社を目指している。
http://www.hikidas.com/

このエントリーをブックマークする

このエントリーにトラックバックする

このエントリーのトラックバックURL
http://withd.jp/mt/mt-tb.cgi/2312


ゲームフリークインタビュー イマジカデジタルスケープ共同募集