2008.04.02

あなたは何を売っているのか?

イメージ:あなたは何を売っているのか?

じんわり効く、漢方薬系Web談義 ♯16
井浦むつお(ヒキダス)

バックナンバー

昔、ある成功しているレストランオーナーから聞いた話、「何を売っていると思うかで成否がわかれるんですよ」。花屋が花を売るように、レストランは食事を売るのだろうか? そう簡単ではないらしいのです。

Webデザイン会社は何を売っているのか?

では、Webデザイン会社は何を売っているのでしょう? 仕事を頼む側から何を買いたいと思っているのか推測してみると。

「いまのHPは素人がつくったようなもんでして…」美しいビジュアルや絶妙な使い勝手などを買ってくれるのかな。
「毎月更新するのが大変なので…」→作業を買ってくれるのかな?
「もっと容易に更新できるしくみってないですかね?」→システムを欲している?

提供できることはさまざま、山ほどあります。コミュニケーションを円滑にする仕事もそのひとつです。Webサイトで理解が深まり、仕事のおついあいが始まったケースはよく聞きます。この場合、Webデザイナーは人と人を結びつける力の一部を担っているといえます。

わたしたちは説明し、理解し、与え、もらう、やりとりを交換しながら生活しています。大げさかもしれませんがコミュニケーションは生活の根幹。それを豊かにするのもデザイナーの仕事です。

コミュニケーションで稼ぐ ー ある歯医者さんの例

友人に、患者の獲得が上手な歯医者さんがいます。彼女が応対すると治療の継続率が明らかにあがり、患者がより高額な治療を希望してくる。そんな先生の魅力はなんだろう? という話になりました。

世界でも指折りの治療技術があるなんてこともなく、いわゆる「ふつう」。差がついているとしたら「患者との対話」、コミュニケーションで稼いでいるのです。彼女の診療ノウハウを少しかいま見てみましょう。

  • 患者の特徴を記憶する
レントゲン写真をみればどの患者のものかわかるのが歯科医らしいですが、あくまでも器官中心の理解。彼女は患者の人となりを記憶します。「歯」ではなく「人」として憶えます。
  • 治療内容を翻訳している
専門用語だらけの治療メニュー。そこから選べといわれても苦しいものです。理解しろといわれても、だったら今頃ドクターになってます。彼女はツボを掴んで

いて「価格は倍しますけど、10年は大丈夫と思っていただいてけっこうでしょう」

  • 内容ではなく、説明順序に気を配る
患者は医学生ではありません。専門用語で延々説明されると苦しいものです。自分がどうなっているのか?何をしないとだめなのか?頭に入りやすい順番で説い

てゆきます。こんな具合に。「ほっとくと歯が減ってしまうよ」

  • 必要なときに必要なことだけ患者に話す
患者にとって歯医者通いは生活のほんの一部です。何か聞くだびに「まぁまず、最近の医療事情において最も重要なことは・・・」と繰り返されたらたまったも

のではありません。

  • 大きなところはドクターが決めて、小さなところは患者が決める
「抜きましょう。今日抜きます?次回がいいでしょうか?」なんてことない会話にみえますが、ここで重要なのは『抜歯の決定は医者でも、最終的には患者自身

が決めたと感じる』という点です。判断を患者に委ねすぎたり、患者の参加意識をそぐ会話では結果が全く違ってきます。

お薦め書籍:パクる技術

パクる技術"パクる"。刺激的なタイトル、印象はさまざまかもしれません。ただ、私たちの創造自体、身の回りにあふれる刺激からはじまります。それらを元にイメージすることは本質的には真似。ならば上手に影響を昇華しましょうよ、という本です。

Webサイト制作に生かせるエッセンス

さて、Webサイトをつくる場合、歯医者さんの例に出てきた5つのエッセンスをあてはめることができないでしょうか。

  • 一度来てくれた患者の特徴を忘れない
ログをきちんと分析し、来訪ユーザの特徴を掴んでいるか、など。
  • 治療内容を翻訳している
これはもう当然ですね。業界内でしか通用しない言葉をそのまま使っていないか。気になる言葉に気を配っているか。
  • 内容ではなく、説明順序に気を配る
意外に忘れがちなのがこれ。ユーザの関心が高いからと個別のキーワードを加え続けてもうまくゆかないことがあります。そのキーワードが支持される背景の想像がかけると説得力がかげります。説明には設計が必要です。
  • 必要なときに必要なことだけ患者に話す
FAQで処理すべきところをサービスのご案内のコーナーでダラダラと述べていないか? メニューの数が把握できないほど肥大化していないか、など。
  • 大きなところはドクターが決めて、小さなところは患者が決める
何がよいか先に述べた後、気持ちよく意思決定をしてもらえるプロセスになっているか、など。

こんなにヒントは隠れているものです。

ヒント探しのトレーニング

わたしたちは直接役立ちそうに感じるものからヒントを探しがちです。コックさんは料理本、中小企業の社長は経営本、そしてデザイナーならデザイン本。もちろん有益なことも多々あります。

しかし、次々に新しいこと、斬新な考え方が起こり続けるのが現実です。ヒントはどこにでも落ちているが、探すのが難しいものです。もうだいぶオヤジになりましたが、若い頃に無理矢理にでも"ヒント探しのトレーニング"をしていたら…と思うことも少なくありません。おすすめします。

さて、最後になりましたが、冒頭のレストランオーナーは何を売っていると答えたのでしょう? 答えは「おいしそうという期待を売る」。ねるほど、でしょ?

お薦め書籍:Visual Grammar ― デザインの文法

Visual Grammar―デザインの文法この本は、すぐにデザイン業務には役立たないかもしれません。事例集等の方が即効性はあるでしょう。ただし、すぐ役だつものは体を強くしてくれるとは限りません。漢方薬のような本もひとつおそばに。

(ヒキダス 井浦むつお)

関連リンク

じんわり効く、漢方薬系Web談義 バックナンバー
パクる技術(Amazon)
Visual Grammar ― デザインの文法(Amazon)

井浦むつおさんプロフィール

印刷デザイン会社に勤務後、同僚とWeb構築会社「ヒキダス」をスタート。Web担当者の悩みをひきだし、参謀役になれればと願う。Webマーケティングからデザイン、システムまでオールラウンドで引き受け、小さくてもエッジの効いた会社を目指している。
http://www.hikidas.com/

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