2006.07.25

[Web標準の日]レポート

イメージ:[Web標準の日]レポート

7月15日、六本木アカデミーヒルズ49で行われた注目のイベント「The Day of Web Standards - Web標準の日」の様子をお届けします。

このイベント「The Day of Web Standards(以下、Web標準の日)」は、毎月第3木曜日にアップルストア銀座で行われ人気イベントとなっている「CSS Nite」と、ミツエーリンクスが運営する「Web標準Blog」が合同で企画・開催したもの。500名近くの参加者が10時間にわたって参加する、非常に内容の濃いものとなった。

52001.jpg

「Web標準」をキーワードにこれだけの規模かつスピーカー・パネラーを招いて行われたイベントは類がなく、日本のWeb制作者に対して一石を投じるものになったことは間違いない。少しずつではあるが、写真を見ながら各セッションの様子を振り返ろう。

当日のスライド資料、音声はWeb標準の日(オフィシャルサイト)で8月15日以降に公開が予定されている。また写真はflickrで公開されているので、併せてご覧いただきたい。

I Have A Dream

基調講演として登場した木達一仁氏(写真左:ミツエーリンクス)。Web標準準拠の現状の課題である、(1)ブラウザ間の実装差異/(2)高い学習曲線は、年内のIE7の発表や、優れたオン/オフラインのリソースによって習得するハードルが下がることで解消に向かうであろうとのこと。

キング牧師の有名な演説「I Have A Dream」になぞらえて自身の夢を語った木達氏。流行や守るべき法律としてではなく、Webの可能性を最大限に導く「道具」としてWeb標準をとらえようという考え方は、Webの将来性を感じさせる基調講演にふさわしい印象的な内容だった。

52002.jpg 52003.jpg

林岳里氏(写真右:アドビシステムズ)による特別講演は、アドビ社が提供するライブラリ集「The Spry framework for Ajax」に関してのもの。HTML・CSS・JavaScriptの基礎知識があればWebデザイナーが簡単に使えるフレームワークであり、フォトギャラリーやRSSリーダーなどのサンプルが紹介されていた。

XMLとサーバーサイドの知識を必要とするAjax。この日のテーマであるWeb標準の準拠も考慮に入れると、どうしても実装には尻込みしてしまいがち。このようなライブラリの存在が果たす役割は、Webデザイナーの表現力を広げる意味でも大きいのではないかと思われる。

ヤッシー&マッシー[謎]

午後のセッションのトップバッターは益子貴寛氏(写真左:サイバーガーデン)。テーマに「Web標準を最大限に活かす」とあるが、クライアントの経済効果から見ても、実装側の技術の浸透から見ても、Web標準は中長期的視点で見る必要があるとのこと。逆に短期的な効果として、法令順守・国際規格・品質保証・CSRなどを訴求できる点が紹介されていたのは興味深かった。

ガイドラインの詳細も語られたのだが、印象に残ったのは「極端な意見を言う人が必要」という話。穏当な意見の中に「極端な意見」が交じれば、少し前進した結論に押し進める事ができるというもの。もちろん、益子氏が強調していたように熱意と論理性が不可欠ではあるのだが…。

52004.jpg 52005.jpg

長谷川恭久氏(写真右:COULD)はステージ上を活発に動きながら、魅せるプレゼンテーション。スライドも「Take Control」「Web Standards Thinking」などキーワードが刺さる見事なもの。パーツのモジュール化を建築に例え、建築家クリストファーアレクサンダーを引き合いに出すあたりは長谷川氏の面目躍如たるところだ。

またモジュール化を大上段に構えるのではなく、(1)意味のある英単語でID・class名を記述し部品化を意識する/(2)スニペット機能でコードを使いまわす/(3)プロジェクトを振り返り自分のパターンをストックする、などのノウハウはTIPSであるとともに、標準化のメリットをデザイナーが享受できることにもつながるものだ。

効率化とWeb標準の本質

河内正紀氏・中村享介氏(写真左:ともにロクナナ)も、高い効率性やメンテナンス性を組織の複数のプロジェクトでどのように確保するかについての話。(1)見出しの範囲/(2)ID・classの命名規則/(3)文書宣言など、書き方を統一することで「使いまわし」を可能にするノウハウが語られた。

さらに話は、「モジュール単位の管理」へ。外部CSSファイルをカテゴリ単位で管理することとの比較により、モジュール単位で管理する優位点が説明された。(1)デザインパターンを洗い出し/(2)同じパターンは同じデザインで、と管理することで再利用性が高く検証しやすい「効率化」がもたらされるという。

52006.jpg 52007.jpg

植木真氏(写真右:インフォアクシア)は、よくあるアクセシビリティへの誤解を紹介した上で、Web標準対応の流れの中でアクセシビリティをとらえることの重要性を説くプレゼンテーションを行った。SEOにしろアクセシビリティにしろ、小手先の対応ではなく、標準技術に則ったサイトを構築することで目的を実現すべきだとの考えだ。

アクセシビリティを福祉の方向からとらえることは大事だが、「関係ない・窮屈だ」と受け止められてしまうのも事実。「Machine Readable/Understandable」なるキーワードが紹介され、機械にも解釈させることができる構造化文書としてとらえることで、アクセシビリティの本質を理解してみようと。目から鱗の充実した内容だった。

道具としてのWeb標準、それを効率化する「道具」

セッションの最後は神森勉氏(写真左:アンカーテクノロジー)。プレゼンテーションはオーサリングツールの歴史に始まり、DreamweaverやContributeを使ったWeb標準実装へと進んでいく。ここでも強調されたのは設計の重要性。設計重視のワークフローに変え、業務効率化のためにオーサリングツールを活用する視点である。

そんな考え方を踏まえてTIPSとして紹介されたのは、コードスニペットの共有やWord原稿の構造化手法、簡便に構造化を行うショートカットなど。どれもワークフローを標準化準拠に変える視点がなければ到達しえないものばかり。道具を道具として使いこなすことの便利さを実感することができた。

52008jpg 52009.jpg

最後は、豪華パネラー陣によるディスカッション「Web標準はビジネスをどう変えるか」。冒頭の森田雄氏(ビジネスアーキテクツ)の「そんなの変わらない。やって当たり前でそれが始まり」という意見で波乱の幕開けに。教育の現場からは「ゆるい概念のスタンダードなので現場が混乱している」との境祐司氏(学校法人阿佐ケ谷学園)の報告も。

あまり噛み合わず議論が深まらないまま終わってしまったディスカッションだったが、逆にこの噛み合わなさ加減が「Web標準」を取り巻く現状を表しているようで興味深かった。森田雄氏の「Web標準とは実装の話であって、その前にコミュニケーションの設計としてのデザインがある」と指摘した点は、「Web標準は道具」とする木達氏の論点と通じるところがあり、大いに納得できた。

以上、10時間におよぶイベントの、ほんのさわりのエッセンスだけをお届けした。それぞれに重要な示唆や明日から使えるノウハウ・TIPSに富む内容だったので、順次公開されるスライド資料や音声を聞いて、参加された方は復習を、来られなかった方は追体験をしていただきたい。そして、このイベントが一時の流行ではなく、来年以降も開催されることを望む。

また来年お会いしましょう!

関連リンク

Web標準の日(オフィシャルサイト)
CSS Nite
Web標準Blog
木達一仁氏(ミツエーリンクス/Web標準Blog)
林岳里氏(アドビシステムズ プロダクトスペシャリスト)
益子貴寛氏(サイバーガーデン)
長谷川恭久氏(COULD)
中村享介氏、河内正紀氏(ロクナナ)
植木真氏(インフォアクシア)
神森勉氏(アンカーテクノロジー)

CSS Niteと株式会社スイッチ

49001.jpgCSS Niteは「CSS」を中心に、Web標準を取り巻く状況にスポットを当てるマンスリーイベント。毎月第3木曜日の夜にアップルストア銀座にて開催されている。今後は、CSS Nite LPと名づけた拡大版や大阪・名古屋・仙台など地方での開催も計画中とのこと。主催者は鷹野雅弘氏(株式会社スイッチ)。鷹野氏は『できるクリエーターFlash独習ナビ』などの著作で知られる。詳細は以下のサイトを確認いただきたい。
CSS Nite
株式会社スイッチ
株式会社スイッチ関連書籍

このエントリーをブックマークする

このエントリーにトラックバックする

このエントリーのトラックバックURL
http://withd.jp/mt/mt-tb.cgi/1437


ゲームフリークインタビュー イマジカデジタルスケープ共同募集