2009.04.20
小野耕石さんインタビュー

まだ誰もやっていないことを切り開いていくことが、芸術につながるんじゃないか。
小野耕石というアーティストのことをご存じの方は、ちょっと「通な」人かもしれない。1979年、岡山・倉敷に生まれ、東京造形大学と東京藝術大学大学院で版画を学んだ彼は、つい先月に東京・資生堂ギャラリーで個展を開いたばかりだ。2009年4月のマンスリートップイメージは、この個展で展示された作品の写真(撮影は加藤健氏による)を掲載させていただいた。筆者もインタビュー前にギャラリーで作品を拝見したが、今までに見たことのない種類のアートという印象で、見る角度によって変化する色彩の輝きにとても惹きつけられた。
実物を見ないとなかなかその魅力が伝わりにくい作品ではあるものの、絵でも版画でもないその独特な表現に「何コレ?」と驚いた方もいらっしゃるだろう。今回は江東区・砂町銀座にある彼のアトリエに足を運んで、版画について興味を持ったきっかけや、今の作風に至るまでの経緯、これからの目標についてお話を伺った。
ジワジワと気づくような作品をつくりたい
大学と大学院で版画を学んだ小野さんだが、今回の資生堂ギャラリーでの作品を見る限り、普通の版画には全く見えない。そもそもなぜ版画に興味を持ち、今の作風に辿り着いたのだろうか? そして、今の作風はどのようにして成り立っているのかを最初に訊いてみた。

画材がところ狭しと並ぶアトリエ。左奥に見えるのはシルクスクリーン枠。
そこで出会ったのが、シルクスクリーンでした。シルクを使った表現には、まだ誰もやっていないことができる可能性が残されているように感じたんです。とにかく、人と同じことをするのはイヤだという気持ちが原動力になって、いろんな方法を模索しました。「どういうものが芸術で、どういうものが芸術じゃないの?」っていう疑問を持ち続けていたんですが、「まだ誰もやっていないことを切り開いていくことが、芸術につながるんじゃないか」ってある時気づいたんです。
マンスリートップイメージの解説にあるように、小野さんの作品は手書きで書いた無数の点を版下として、そこにシルクスクリーンプリントで100回以上刷っていき、インクの層を積み重ねていくという手法によってできている。実際に彼の作品を見ると、自分の見る位置によって色の見え方が変わるのが大きな特徴だ。520cm×520cmの作品「古き頃、月は水面の色を変えた」の写真には、作品の上に珊瑚礁のような模様が見えるが、これが角度によって変わっていくといったら伝わるだろうか。
僕の中では、すぐに見て分かるような作品はつまらない、という思いがあるんですね。「ん、これ何だろ?」って気になって近寄ってみて、だんだんジワジワと「あー、そうか!」と気づくような作品をつくりたいと思っているんです。520cm×520cmなんていう大きさの作品をつくったのも、今回が初めてでした。まだまだ作品数が少ないので、今後はもっと作品をたくさんつくりたいですね。
これだけの手間がかかる手法で、大きな作品をつくるのは並大抵の努力ではできないだろう。しかし、彼の作品にはたくさんの時間と手間がかけられた痕跡はほとんど残っていない。まるで最初からそういうカタチをした生物のような存在感を持っているのだ。見る角度によって色彩を変える彼の作品はまるで電気で発光しているかのようで、つい何度も見てしまう魅力に満ちていた。
1 2
このエントリーをブックマークする
このエントリーにトラックバックする
このエントリーのトラックバックURL
http://withd.jp/mt/mt-tb.cgi/3626
NEWSの新着記事
2009.06.29
行動につながる情報を見つけ出す
2009.06.29
「自分を生きる」ほか道なし
2009.06.25
人柄のデザイン
2009.06.25
Web標準と接する際の3つの留意点
2009.06.22











