こんにちは、DHです。
これまで第1回から「探す・気づく」→「考える」→「つくる」→「広める」と、プロセスごとにお話してきました。今回から第2フェーズに入っての「探す・気づく」です。
ナマの情報を得る
デザインのテーマを「探す・気づく」には、いろいろな手法がありますが、その1つが「定点観測」。自分の目で実際に定点観測をすることで、「ナマの情報」がわかります。
店であれば「どういった売られ方をしているのか(店舗デザイン、照明の当て方、陳列方法、POPデザイン、販売員の接客方法など)」、「どういった買われ方をしているのか(通行客の店舗への立ち寄り方、展示品をどう手に取ってどこを見るか、店員や同行客とどういった会話を交わすのか)」などがポイントです。
さらに、1年後、2年後と「定点観測」を続けていくことで、現場の変化などの新たな発見もできます。こうして定点観測で気づいたことを、デザインする時に活かすわけです。
一見、こうしたリサーチとは縁遠そうなイメージの職人さんにも、定点観測についての言葉が多々あります。
- 穂積実氏/つまみかんざし職人
- 遠藤晏弘(やすひろ)氏/尺八職人
話題の場所を定点観測する
例えば六本木ヒルズ(以下、「六ヒル」)ができた当時、よく行き交う人々を定点観測しました。早々に来店する、流行に敏感なお客さんはどんな人たちか。服やアクセサリーや鞄など、どんなデザインの持ち物を身に付けているのか。どんなデザインのモノが、どう売られているか。
これらは雑誌やネットなどのメディアに載らない情報なので、やはり、実際に現場に出かけ、一次情報として自分の目で確かめることが重要になってきます。
実際に現場を見て気がついたのは、「ショップの紙袋」を持っている人が意外に少なかったこと。実際にモノを買って帰る客が思いのほか少なかったのです。
当時、高級ブランドのテナントも多かったのですが、買うなら路面店が並んでいて、品揃えも多く、街も大きい銀座の方が魅力的なのかもしれない、という見方ができます。飲食に関しても、当時は高級店が多く、若い人の予算では難しいのではという仮説が立ちましたが、実際、若者客は周辺の飲食店などへ流れていたように感じました。
また、様々な国の大使館や外国人が集まり、無国籍で雑多なカラーの六本木地区の中、どちらかというと「垂直志向」かつ唯我独尊的な「高級志向」を貫いたことで、周りから浮いていたような印象も見受けられました。
周辺の変化も観測
今年3月、数百メートル先に三井不動産が「東京ミッドタウン」をオープン。地域との共存を考慮し、周辺施設なども紹介されています。こちらも併せて定点観測することで、六ヒルとの微妙な違いが色々見えてきます(この辺は皆さんご自身の目で気づいていただければと思います)。
三井不動産はさらにその1キロ先の赤坂地域も開発中で(2008年竣工)、完成すると両地区間の約1キロにわたる一帯に、様々な動きが起こるはず。赤坂からTBS、東京ミッドタウンにかけての広い地域が1つにつながり、広大な「商」「職」「遊」ゾーンができることになります。
敷地内という「点」にこだわった垂直志向の森ビル「六ヒル」と、地域という「面」を意識した水平志向の三井不動産「赤坂〜東京ミッドタウン」の両動向は引き続き注目です。
定点観測で「見る」もの
観測の対象となるのは「人」だけではありません。すり減っていく木片の角Rを、携帯電話の角Rに活かす。テーブルの足の影の遷(うつ)り変わりから、新しいテーブルの足をデザインする。すり減った石ころをコートハンガーに活かす、など。自然から、モノの痕跡から、毎日見る風景から。観測対象はありとあらゆるところにあるのです。
- 建築・プロダクトデザイナー/アキッレ・カスティリオーニ
- 美術評論家・骨董鑑定家・装丁家/青山二郎
(『日本の陶器』より一部抜粋)
梅雨が明ければ、ますます外に出かける機会が増えます。どんどん定点観測してみきましょう。変化をぼーっと見過ごすか、ふと気がつくかは、皆さん次第です。
関連リンク
語録に探る「デザインのトリガー」のバックナンバー
東京ミッドタウン
六本木ヒルズ
青山二郎
DHさんプロフィール
60年代後半生まれ。機械工学部を卒業し、電気製品メーカーでプロダクトデザイン、プロモーション、業界紙広報、提案営業、商品ユーザビリティ部門のマネジメントなど、さまざまな職種に関わる。現在は環境関連のプロダクトがメイン。休日は展示会、セミナー、デザインイベントなどを散策。スーパーや100均ショップで、ちょっとした生活道具や雑貨にいちいち気を取られてしまうのが弱点である。
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