2007.07.08

タッチポイントのデザイン

イメージ:タッチポイントのデザイン

語録に探る「デザインのトリガー」 ♯4
DH(プロダクトデザイナー)

バックナンバー

こんにちは、DHです。

これまでは「探す・気づく」→「考える」→「つくる」と、プロセスごとにお話してきました。今回は最後のプロセス、「広める」についてお話ししましょう。

例え納得のいくモノができたとしても、使ってほしい人に届かないことには、意味がありません。その存在や特徴を知ってもらうためには、いかに情報を「広める」かが重要になります。

様々なデザインが同時進行

ロゴマークに始まり、パッケージ、パンフレット、カタログ、POP、売り場のデザイン、発表会・展示会、ホームページ、広告、紹介記事など、消費者が商品を認知する「タッチポイント」はたくさんあります。これら全てについて、デザインのトーンを統一することが、非常に重要であり、かつ労力のいることでもあります。

最近は、こうした販促・イベント部分のデザインを、製品デザインと平行して行なう「垂直立ち上げ型」のプロジェクトも多くなっています。その結果、タイトなスケジュールで同時進行する複数のデザインワークを、1人のデザイナーが全て担当する、ということは非常に困難になっています。

ケーススタディ

象徴的な2つの事例を紹介しましょう。

  • 製品のデザインはよい出来でしたが、製品をデザインしたA氏はイベント展示の対応などに追われ、製品カタログやPOPといった消費者とのタッチポイントのデザインは、カタログ担当のK氏に任せきりになっていました。A氏とK氏は旧知の仲ということもあり、「まぁ大丈夫だろう」とあまり細かい打ち合わせもせず、K氏が外注デザイナーにディレクションする際も、A氏は最後まで立ち会えませんでした。

    そしてカタログの色校正が上がった時、A氏は「あぁー…」と天を仰ぎました。カタログのイメージが製品と全くマッチしていなかったのです。これも原因の1つなのか、このシリーズ商品の売れ行きはあまりよくないようです。
  • デザイナーB氏は忙しい中をぬって、事あるごとに販促・広告担当者をこまめに訪ね、デザインについて細かく意見を交わしました。パッケージのデザインでは、業界で決められている色がパッケージのトーンと合わず、どうしても全体のトーンを変えたくなかったB氏は、業界団体に自ら出向き、違う色も使用できるように掛け合いました。

    また、企画部門が営業向けに行う商品説明会へも足を運び、自分の言葉で説明をしました。こうして市場に出たB氏の製品は、成功例として認められています。

A氏に能力がない、ということではありません。また、デザイナーの中には「何でも、自分で手を動かして作りたがる」というタイプも多く、それ自体は悪いことではありません。ただ問題となるのが「何でも自分でやろうとすると、結果的に全体に手が回らなくなる」という点です。

1人で全部やるなら、そのためのアイデアを

例えば、ISSEI MIYAKEのブランド「me ISSEY MIYAKE」では、デザイナーのグエナエル・ニコラ氏が、ショップ、ディスプレイ、ロゴ、パッケージをまとめて手がけています。

三宅一生氏からの要望は、「面白いもの」「新しいもの」という2点だけ。通常、パッケージ、ショップ、グラフィックデザインは別々のデザイナーが担当しますが、ニコラ氏のデザインアイデアはそれらが密接に連携していたため、トータルで提案させてほしいと申し出たのだそうです。

当然、時間が足りなくなります。そこで洋服のパッケージには既存のPETボトルを流用するなどして、既存の技術を別の用途に転用し、目新しさを出しました。こうすることで、新しさと時間短縮という、2つの要素を両立させることに成功したのです。

ニコラ氏は、

逆に短い時間だからこそ、このデザインが可能になったとも言える。時間があり過ぎると「あれもできる、これもできる」といろいろな要素を加えがち。時間がないから、どんどん決めて進めるしかなかった。

と語っています。

逆に「無印良品」の場合は、深澤直人氏やジャスパー・モリソン氏など、外部のデザイナーに製品デザインを依頼し、一方、店舗や消費者とのコミュニケーションの部分は杉本貴志氏や原研哉氏に任せつつも、トータルで1つのイメージにまとめあげています。

±0」はメーカー各社やダイヤモンド社と組み、それぞれの得意分野、既存のメディア、戦術ノウハウを最大限に活用しています。

このように、様々な人が関わりながらも全体のイメージを統一させるためには、「各部門の担当者に対し、いかに的確にイメージやコンセプトを伝えるか」ということがポイントになります。この辺りについては、別の機会に取り上げたいと思います。

これで、「探す・気づく」→「考える」→「つくる」→「広める」というプロセスを一巡しました。次回からは第2フェーズの「探す・気づく」に入ります。

(プロダクトデザイナー DH)

関連リンク

語録に探る「デザインのトリガー」のバックナンバー
ISSEI MIYAKE
グエナエル・ニコラ(CURIOSITY Inc.)
無印良品
深澤直人(Wikipedia)
ジャスパー・モリソン
杉本貴志
原研哉(Wikipedia)
±0

DHさんプロフィール

60年代後半生まれ。機械工学部を卒業し、電気製品メーカーでプロダクトデザイン、プロモーション、業界紙広報、提案営業、商品ユーザビリティ部門のマネジメントなど、さまざまな職種に関わる。現在は環境関連のプロダクトがメイン。休日は展示会、セミナー、デザインイベントなどを散策。スーパーや100均ショップで、ちょっとした生活道具や雑貨にいちいち気を取られてしまうのが弱点である。

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