いよいよ芸術の秋も深まってきました。皆さん、いかがお過ごしですか? 日本に比べると、どんよりとした天気続きのドイツですが(11月が一番天気が悪いのです)、そんな灰色な気分をものともせず、ベルリンで暮らすクリエーターたちは今日も頑張っています!
今回はベルリンに拠点を置き、ドイツ国内以外にもニューヨークやフランスで新しい時代の風を生み出している若手デザイナー/アーティスト「44 Flavours」の二人に話を伺いたいと思います。
2人組ユニット「44 Flavours」の結成のきっかけは、入試試験
フリオ・ロッレ(Julio Roelle)とゼバスティアン・バッゲ(Sebastian Bagge)の二人三脚で歩んできた「44 Flavours」。きっかけはビ-レフェルト芸術専科学校の入学試験だったとか。偶然の出会いから始まった関係はどのように発展していったのでしょうか。

引っ越したばかりのときの、広々としたスタジオ。ゼバスティアン・バッゲ(左)とフリオ・ロッレ(右)
「44 Flavours(44種類の味)」という名前は、ニューヨークに行った時に街角でアイスクリームを売っているバンを見て、「これだ!」って思ってつけた。「アートも十人十色、44人いれば44の味覚と好みがあっていいじゃないか」ってね。ちょっと素敵だよね。世界中の異文化、千差万別の価値観や好みを網羅するなんて所詮無理な話だと普通なら思うだろうけれど、そんな無理をも可能にしたい、そういう意味がこの名前に込められているんだ。

44Flavoursの名前の由来はアイスクリーム屋さんのバンだった
社会で敬遠されるシーンに光を当てたかった
マガジンを作ろうというきっかけは、フリオが十代のころに読んでいた、ストリートアート・グラフィティ系雑誌のXplicit Grafx、Graffiti Magazine、Voxer、Lodownなどの影響から。雑誌を見てはかっこいいなぁとあこがれていた彼は、大学で造形、印刷、メディアを学習するうちに、自分でもやってみたいと思ったそう。

SupaLifeKiostの「The Tape vs. RQM - PUBLIC TRANSPORT」展覧会準備風景。
Warschauer Strasse駅にて。こういった日常の場所から彼らのアートは生まれてくる
手作り感にこだわったマガジンづくり
これまでにNo.0からNo.3まで、合計4号のマガジンを発行してきました。各号ごとにテーマが決められており、世界中のアーティストから作品を公募。掲載する作品は、各アーティストとインタビューと話し合いを進める中でチョイスし、一冊の本の中にまとめられています。
毎回、本の綴じ・表紙・おまけのステッカーにいたるまで、手作り感にこだわっています。大量生産で安く売られることに終始した今日の本づくりとは違う、独自の価値感で「手に取った人に伝わるなにか」を大事にしたいそう。
※注1:“Bagge(バッゲ)”という苗字は独語で“Bagger=ショベルカー”という意味で、「頼りになるな!」という親しみを込めて、フリオはゼバスティアンを苗字で呼ぶことがよくある。

手作り感あふれる第2号。ひとつひとつのデザインが違う
夢ばかりではなく、経済活動をしっかり築くために
考え方も仕事に対する姿勢もまったく異なる二人ですが、大学を卒業後に会社を立ち上げました。「夢ばかりでは食べていけないから」という理由で、経済活動をしっかりと築きたかったそう。マガジンや新しいプロジェクトをしていくためには、投資する資金が必要。初めてのことだらけですが、いままでも彼らは意欲的にさまざまなことに挑戦してきました。会社としてパワーアップした彼らはマガジン以外にどのような活動をし、今後は何をしていきたいのでしょうか。

ZOO YORKで手がけた作品。フライヤー(左)、バッグ(中)、Tシャツ
今後の夢……。あえていうなら、“招待”の待遇で展覧会をやってみたい。展覧会のオファーが世界中からくるんだけど、旅費も運送費も滞在費も出ず自費になってしまうから、貧乏な僕らは見送らざるを得なかったことが多かったんだ。だから、日本でやる際は、是非“招待”でお願いします。(笑)

デュッセルドルフでの展覧会の様子。彼らの作品には、ストリートのにおいが必ずする。
静と動がうまくマッチした二人
フランス人ハーフでベルギーの国籍も持つフリオは、その巧みな語学力と人懐こさで対談を担当する窓口役。ゼバスティアンが技術的な相談・解決策を提示し実現させる、いわば縁の下の力持ち。そんな彼らのアトリエは、工場跡の建物の広いロフト付きの最上階。「これが自分達の夢だったんだ。またひとつ夢を叶えたよ」と無邪気に笑うフリオ。それを見て微笑むゼバスティアン。まさに静(ゼバスティアン)と動(フリオ)といった感じですが、それが絶妙なバランスを生んでいるのかもしれません。
必ずどこかにストリートの味を漂わせる彼らの作品。これからも世界のストリートアートシーンをかけめぐっていくのだろうなぁと、遠く見えるベルリン名物のテレビ塔を見ながら思ったのでした。

スタジオの窓からは遠くにテレビ塔が見える
今回は「ベルリンの未発達さは、僕らにとってまるで大きな遊び場。そんなベルリンが世界で一番大好き!」というフリオとゼバスティアンにエネルギーをもらうことができました。
次回はPeperoniBooks、つまり「唐辛子出版」という名前の、個人経営の芸術書専門出版社の社長、ハネス・ヴァンドラー(Hannes Wanderer)をご紹介します。お楽しみに!
44 Flavoursプロフィール
フリオ・ロッレ(Julio Roelle) & ゼバスティアン・バッゲ(Sebastian Bagge)によるユニット。両者1981年生まれ。オスナブリュック出身。
2003年ビーレフェルト芸術専修大学入学と同時に、44 Flavoursとしての活動をスタートさせる。2006年フリオが単身ニューヨークに渡りデザイン会社「Zoo York」で3ヶ月のインターン研修後、ベルリンに拠点を移す。ゼバスティアンはその間、ビーレフェルトで活動。Artists Unlimitedにも参加し、2007年合同卒業制作でアート&デザインの学位取得。以降、ベルリンの工場跡にスタジオを構え、2008年二人の共同出資で「44 Flavours」を会社として正式に設立した。
関連リンク
Makis. のベルリンデザイン日誌 バックナンバー
44 Flavours
ビ-レフェルト芸術専科学校
Xplicit Grafx
Graffiti Magazine
Voxer
Lodown
ZOO YORK
PeperoniBooks
Artists Unlimited
Makis.さんプロフィール
ドローイング作家・イラストレーター。ベルリン在住。ドイツで第一作目の作品集「Makis Haustierbuch(家動物本)」(Peperoni Book/Berlin/2006年)を出版。以来ベルリンを拠点にドローイングを主体とした制作を展開し、イラストレーション・コミック・版画等、様々な分野で活動中。「Makis Haustierbuch」はAmazonで購入可能。
http://www.makishimizu.de/
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