2008.11.18

ベルリン・ストリートの最前線で活躍する2人組

イメージ:ベルリン・ストリートの最前線で活躍する2人組

Makis. のベルリンデザイン日誌 ♯3
Makis.(from ベルリン)

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いよいよ芸術の秋も深まってきました。皆さん、いかがお過ごしですか? 日本に比べると、どんよりとした天気続きのドイツですが(11月が一番天気が悪いのです)、そんな灰色な気分をものともせず、ベルリンで暮らすクリエーターたちは今日も頑張っています!

今回はベルリンに拠点を置き、ドイツ国内以外にもニューヨークやフランスで新しい時代の風を生み出している若手デザイナー/アーティスト「44 Flavours」の二人に話を伺いたいと思います。

2人組ユニット「44 Flavours」の結成のきっかけは、入試試験

フリオ・ロッレ(Julio Roelle)とゼバスティアン・バッゲ(Sebastian Bagge)の二人三脚で歩んできた「44 Flavours」。きっかけはビ-レフェルト芸術専科学校の入学試験だったとか。偶然の出会いから始まった関係はどのように発展していったのでしょうか。

引っ越したばかりのときの、広々としたスタジオ ゼバスティアン・バッゲ フリオ・ロッレ
引っ越したばかりのときの、広々としたスタジオ。ゼバスティアン・バッゲ(左)とフリオ・ロッレ(右)
【フリオ】入試の数日後に合格発表で再会して、両方合格したことがわかったんだ。その後、「どうせなら一緒に暮らそうか」とフラットをシェアしたことがユニットの始まりかな。学校の授業や試験も同じで共通の話題が多かったのもあって、いつの間にか学校の空き研究室の一室を二人で占領して面白いことばかりやっていくようになった。

「44 Flavours(44種類の味)」という名前は、ニューヨークに行った時に街角でアイスクリームを売っているバンを見て、「これだ!」って思ってつけた。「アートも十人十色、44人いれば44の味覚と好みがあっていいじゃないか」ってね。ちょっと素敵だよね。世界中の異文化、千差万別の価値観や好みを網羅するなんて所詮無理な話だと普通なら思うだろうけれど、そんな無理をも可能にしたい、そういう意味がこの名前に込められているんだ。

44Flavoursの名前の由来 アイスクリーム屋さんのバン
44Flavoursの名前の由来はアイスクリーム屋さんのバンだった

社会で敬遠されるシーンに光を当てたかった

マガジンを作ろうというきっかけは、フリオが十代のころに読んでいた、ストリートアート・グラフィティ系雑誌のXplicit GrafxGraffiti MagazineVoxerLodownなどの影響から。雑誌を見てはかっこいいなぁとあこがれていた彼は、大学で造形、印刷、メディアを学習するうちに、自分でもやってみたいと思ったそう。

【フリオ】いざ雑誌をつくろうと思うと、万事初めて雲をつかむような感じだった。そんなときはいつもゼバスティアンに相談をしたよ。彼はいつだって明確な答えを持っていたからね。お金も、経験も、確信も何もなかったのだけれど、どうしてもストリートアート、グラフィティといった、常に警察と追いかけっこをし、社会で敬遠されるシーンに光を当てたかった。「これが僕らの生き様なんだ」ということを社会に提示したかったんだ。アートは社会に必要だと、周りに認められるためのプレゼンをしなくてはいけないと思った。僕はそういう場面をアーティストに与えたかったんだ。
「The Tape vs. RQM - PUBLIC TRANSPORT」展覧会準備風景 「The Tape vs. RQM - PUBLIC TRANSPORT」展覧会準備風景
SupaLifeKiostの「The Tape vs. RQM - PUBLIC TRANSPORT」展覧会準備風景。
Warschauer Strasse駅にて。こういった日常の場所から彼らのアートは生まれてくる
【ゼバスティアン】僕はただの人間として手で作ることに、喜びや生きがいを感じる。伝えたい何か、伝えたい誰か、それを達成するための手段がマガジンであったり、シルクスクリーンの作品であったり、ウェブであったり……。メディアは結局なんでもいいと思う。とにかく作り手として、常に愛を込めたモノづくりをしたい、ただそれだけなんだ。

手作り感にこだわったマガジンづくり

これまでにNo.0からNo.3まで、合計4号のマガジンを発行してきました。各号ごとにテーマが決められており、世界中のアーティストから作品を公募。掲載する作品は、各アーティストとインタビューと話し合いを進める中でチョイスし、一冊の本の中にまとめられています。

毎回、本の綴じ・表紙・おまけのステッカーにいたるまで、手作り感にこだわっています。大量生産で安く売られることに終始した今日の本づくりとは違う、独自の価値感で「手に取った人に伝わるなにか」を大事にしたいそう。

【フリオ】僕の場合、これがどうしてもやりたい!というのがいつもあって、それを実現するのにはどうすればいいのか、とことんゼバスティアンと検討する。コンセプトや技術面等なんでも相談できるのは、家族代々で印刷屋を営んでいる家に生まれた“バッゲ”(※注1)がいてくれるからこそ。そうやって僕らはここまでやってきたんだ。

※注1:“Bagge(バッゲ)”という苗字は独語で“Bagger=ショベルカー”という意味で、「頼りになるな!」という親しみを込めて、フリオはゼバスティアンを苗字で呼ぶことがよくある。

手作り感あふれる第2号 手作り感あふれる第2号

手作り感あふれる第2号 手作り感あふれる第2号
手作り感あふれる第2号。ひとつひとつのデザインが違う

【ゼバスティアン】僕の場合はフリオが「いつか頂点に立ちたい。世界中をまたにかけて活動するアーティストになりたい」という情熱でモノづくりをしているのとは対照的。誰かが僕らの仕事を見て気に入ってくれて、「君達と働きたい。任せたい」と言われることが原動力なんだ。それはそれで仕事を与えられるという意味で、単純作業としてのデザインに陥る可能性があるかもしれないけれどね。でも、これまでに「君達の仕事いいね!」と言われ任された仕事は、いい緊張感と責任感の中で、どれもやりがいがあった。僕にとって、ささやかな喜びを日常の経済活動に結び付けられることこそが希望だな。

夢ばかりではなく、経済活動をしっかり築くために

考え方も仕事に対する姿勢もまったく異なる二人ですが、大学を卒業後に会社を立ち上げました。「夢ばかりでは食べていけないから」という理由で、経済活動をしっかりと築きたかったそう。マガジンや新しいプロジェクトをしていくためには、投資する資金が必要。初めてのことだらけですが、いままでも彼らは意欲的にさまざまなことに挑戦してきました。会社としてパワーアップした彼らはマガジン以外にどのような活動をし、今後は何をしていきたいのでしょうか。

【フリオ】以前、ニューヨークにある人気ブランドZOO YORKの事務所でインターンをしていたんだけど、そのときのグラフィックデザイナーとしての実績が認められて、今では毎シーズン本部から依頼が来るようになった。
ZOO YORKフライヤー ZOO YORKバッグ ZOO YORKTシャツ
ZOO YORKで手がけた作品。フライヤー(左)、バッグ(中)、Tシャツ
他にも、故郷の庭師に依頼されたロゴや、友人のショップの壁紙、音楽仲間のポスターやジャケットを手がけたり…多様だ。それが今日につながっていると思うし、それによってアーティストとして各地で展覧会をするきっかけやチャンスが増えてきている。

今後の夢……。あえていうなら、“招待”の待遇で展覧会をやってみたい。展覧会のオファーが世界中からくるんだけど、旅費も運送費も滞在費も出ず自費になってしまうから、貧乏な僕らは見送らざるを得なかったことが多かったんだ。だから、日本でやる際は、是非“招待”でお願いします。(笑)

デュッセルドルフでの展覧会の様子 デュッセルドルフでの展覧会の様子
デュッセルドルフでの展覧会の様子。彼らの作品には、ストリートのにおいが必ずする。

静と動がうまくマッチした二人

フランス人ハーフでベルギーの国籍も持つフリオは、その巧みな語学力と人懐こさで対談を担当する窓口役。ゼバスティアンが技術的な相談・解決策を提示し実現させる、いわば縁の下の力持ち。そんな彼らのアトリエは、工場跡の建物の広いロフト付きの最上階。「これが自分達の夢だったんだ。またひとつ夢を叶えたよ」と無邪気に笑うフリオ。それを見て微笑むゼバスティアン。まさに静(ゼバスティアン)と動(フリオ)といった感じですが、それが絶妙なバランスを生んでいるのかもしれません。

必ずどこかにストリートの味を漂わせる彼らの作品。これからも世界のストリートアートシーンをかけめぐっていくのだろうなぁと、遠く見えるベルリン名物のテレビ塔を見ながら思ったのでした。

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スタジオの窓からは遠くにテレビ塔が見える

今回は「ベルリンの未発達さは、僕らにとってまるで大きな遊び場。そんなベルリンが世界で一番大好き!」というフリオとゼバスティアンにエネルギーをもらうことができました。

次回はPeperoniBooks、つまり「唐辛子出版」という名前の、個人経営の芸術書専門出版社の社長、ハネス・ヴァンドラー(Hannes Wanderer)をご紹介します。お楽しみに!

44 Flavoursプロフィール

フリオ・ロッレ(Julio Roelle) & ゼバスティアン・バッゲ(Sebastian Bagge)によるユニット。両者1981年生まれ。オスナブリュック出身。
2003年ビーレフェルト芸術専修大学入学と同時に、44 Flavoursとしての活動をスタートさせる。2006年フリオが単身ニューヨークに渡りデザイン会社「Zoo York」で3ヶ月のインターン研修後、ベルリンに拠点を移す。ゼバスティアンはその間、ビーレフェルトで活動。Artists Unlimitedにも参加し、2007年合同卒業制作でアート&デザインの学位取得。以降、ベルリンの工場跡にスタジオを構え、2008年二人の共同出資で「44 Flavours」を会社として正式に設立した。

(Makis. from ベルリン)

関連リンク

Makis. のベルリンデザイン日誌 バックナンバー
44 Flavours
ビ-レフェルト芸術専科学校
Xplicit Grafx
Graffiti Magazine
Voxer
Lodown
ZOO YORK
PeperoniBooks
Artists Unlimited

Makis.さんプロフィール

ドローイング作家・イラストレーター。ベルリン在住。ドイツで第一作目の作品集「Makis Haustierbuch(家動物本)」(Peperoni Book/Berlin/2006年)を出版。以来ベルリンを拠点にドローイングを主体とした制作を展開し、イラストレーション・コミック・版画等、様々な分野で活動中。「Makis Haustierbuch」はAmazonで購入可能。
http://www.makishimizu.de/

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