7月30日にグランドオープンを迎えたshop btf、私もこれまで2回イベントをレポートした縁もあって、参加しました。デザイナーを始め、メーカーやメディアの方でギッシリ! レンタルもできるこのスペース、注目は高いようですね。
今月のゲストは、コレクターとして知られると同時に、数々のデザインブームを巻き起こしてきた柳本浩市さん。となると、やはりレポートしない訳にはいきません(笑)。月刊DTPWORLDでは、海外の広告物など膨大なコレクションからデザインの潮流を紹介する連載「Design=Social」を展開中。トークショーは、そんな柳本さんが影響を受けたモノの数々が伺える、大変興味深い内容となりました。

柳本浩市さん
早熟すぎるコレクター生活のはじまり
今回のトークショー、「これまで経験されてきたデザインやカルチャー体験、膨大なコレクション履歴などがナマで聞けるまたとないチャンス!」と紹介されていましたが、なんとその起点は4歳まで遡ります(驚)。ご両親が書店を営んでいたことで、立ち読みが習慣になっていた柳本少年、子ども向けの本を読み尽くすとビジュアルが多い雑誌を目にするようになりました。

植草甚一が責任編集を勤めた、ワンダーランド(現宝島)創刊号
そんな雑誌で出会ったのが、植草甚一さん。雑学の王様と呼ばれ、タモリさんや淀川長治さんの先生と呼べる方です。音楽ではブルーノートを聞き(!)、幼稚園の頃からレコードを集めていたのだとか。もちろんアイドル歌手、歌謡曲とかも聴いていただけど、バックバンドに誰がいる、プロデュースや作詞作曲は誰とか、マニアックな方向の興味ばかり強かったそうです。
Maid In USAに魅せられた日々。気分はバイヤー?
転機が訪れたのは、小学校に入るころ。世の中にアメリカ製品がメジャーではなかったとき、登場したのが読売新聞社が1975年に発行した「Made In USAカタログ」でした。洋服だけじゃなく、家具や楽器、斧まで載っていたのですが、特にジーンズのページに衝撃を受けたのだとか。そして、アメリカから洋服や自転車など通販で買い集めだします。

アメリカなものをひたすらにスクラップ(左)、手描きのリスト(右)
当時日本全体でもこの本の影響は強く出ていて、ソニープラザ(現プラザ)はアメリカグッズ一色。アメリカへの憧れは、さらにノートや鉛筆のダース箱など、世界中の文房具の収集へと展開していきます。コーヒーの袋やカフェの砂糖、ラゲッジラベル、宝くじ、世界中のラッピングペーパー、リトルプレスなど、興味の対象が次々と広がって行ったのでした。

小学校の自由研究「日本のロックの変遷」。近田春夫!
同時期に興味を深めたのが、日本のロックの変遷。小学校の自由研究でまとめあげた資料をもとに、15年ぐらい前に雑誌記事も書かれたそう。空恐ろしい小学生。当時の研究がプロ顔負けだったことを如実に物語っていますね(笑)。
モノを集めることから、価値を伝えることへ
トークショーの後半は、最近の仕事の紹介を中心に進行しました。ドイツのブラウンが50周年を迎えたとき、展覧会「ブラウン展 - 形を超えたデザイン(2005年)」を企画。優れたデザインの数々はもちろん、柳本さんが伝えたかったのはブラウンの先進的な社風でした。

グリッドを基調にした展示の様子(左)、社内ポスターや社内報も洗練されている(右)
50年前から託児所を作っていたり、会社の中で高校卒業くらいまでの学校教育をやったり、有名な建築家に社宅を作らせたり。ブラウンのそのような取り組みは、物を提供する前に社員の充実に力を費やす。その結果イイものができて、お客さんに喜んでもらえる、そこが一番会社に必要なことだと気づき、実行していたのがブラウンの先進性でした。
同時期で印象に残るのは、エアラインブーム。エミリオ・プッチやアレキサンダー・ジラルドといったデザイナーを起用し、「退屈な飛行機の終焉」を謳ったブラニフ航空。80年代に倒産し、日本ではほとんど知られていなかったこの航空会社を、デザインやファッションの視点で取り上げた「ブラニフ エアライン エキスポ(2004年)」をきっかけにブームが花開きました。他にも、ディック・ブルーナのペーパーバックなど、柳本さんが見いだしたモノたちは大きな話題を集めることになります。

6,000冊超えるエアラインもののスクラップブック(左)、貴重なペーパーバッグ(右)
海外に出かけるようになった最近では、マンホールのふたとか、ゴミ収集所のカラーリングに興味が出てきたのだとか。観光地とかレストランではなくて、洗濯物を干しているところとか、ゴミ箱のデザインとか、紙幣の柄の意味とか。日常に根付いたデザインに、その国の本質が隠れているのではないかと。そんなことを体感できる旅行ガイド本を、いろいろな国別に作りたいそうです。
社会と密接に結びついた、モノの存在
画像はこれで全部なんですが、と柳本さんが呟いたときには、あっというまにトークショーも終わりの時間に。最後に語られたのは、モノを集めることで見えてきた、社会の大きな流れと、その中で生きていく、ご自身の役割についてでした。
そんな仮説と検証を繰り返してきたことで、かなりの確率でヒット商品が生まれるのが見えるようになってきたのだとか。
自分が培ってきたノウハウを使って、何か社会の役に立てるようなことを考えたいと思っている。そんなメッセージでトークショーは締めくくられました。
とにかく圧巻の「量」
大量のコレクションはコンピューター管理で倉庫に保管されており、必要なものは「何番の何を送ってほしい」とメールを出せば、翌日に届くのだとか。このようにして、スティグ・リンドベリやオーレ・エクセルなどの北欧モノ、ジャン・プルーヴェの家具など印象深いモノたちを私たちが知ることができたのだと思うと、感慨深いですね。ちなみに、まとめてイベントなりで売るのが、モノを溜めないコツだとか。

柳本さんが手がけられた書籍(左)、貴重なコレクションを販売中(右)
誰でもできる、だけど誰もやってないことをやる。その行動力を支えているのは、人一倍の好奇心と、ワクワクしたという素直な気持ち。次々と興味の対象を移して行く柳本さんが見ている世界、これからも目が離せませんね。
次回のゲストは森チャックさん(アーティスト)&菅原そうたさん(CGマンガ家)
次回のトークショーは9月20日(土)開催。「いたずらぐまのグル〜ミ〜」はじめ、独自のユーモアセンスで数々のキャラクター生み出すアーチスト・森チャックさんと、「みんなのトニオちゃん」や「B-DASH」のVJでお馴染みのCG漫画家・菅原そうたさんによる初のトークショーが実現! 応募受付中です。
関連リンク
特派員のイベントレポート バックナンバー
shop btf
metabolism
植草甚一(Wikipedia)
Made In USAカタログ 1975(cozyの蒼い日々)
プラザ(Wikipedia)
50 Years Braun Design Innovation(Braun)
BRAUN Exhibition
エミリオ・プッチ(Wikipedia)
アレキサンダー・ジラルド(hhstyle.com)
ブラニフ航空(Wikipedia)
ブラニフ エアライン エキスポ(PARCO MUSEUM)
スティグ・リンドベリ(biotope)
オーレ・エクセル(collex)
ジャン・プルーヴェ(Wikipedia)
クリエイタートークショー in shop btf Vol.6 森チャック(アーティスト)&菅原そうた(CGマンガ家)
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