2008.06.09
GROOVISIONSトークショーレポート

久しぶりの作品集「GROOVISIONS MGR」の刊行を記念して、青山ブックセンター本店で6月8日に行われたトークショーの様子をお届けします。
GROOVISIONS(グルーヴィジョンズ、以下グルビ)は、1993年に京都で結成されたデザイン集団。「GROOVISIONS MGR」(パルコ出版)は、2000年に発売された「GRV2000」以来の久々の作品集となる。
この日は、代表の伊藤弘氏、主にグラフィックデザインや洋服(Tシャツ)のデザインを担当する原徹氏、主に映像を担当する住岡謙次氏をゲストに、リッラクス誌でグルビの連載「今月のGRVナンバー」を手がけた担当エディターの水島己氏の進行で、リラックスムードの中行われた。
結成秘話
1993年結成としている彼らだが、もともと京都のクラブ「メトロ」を中心にFantastic Plastic Machineの田中知之氏、Mondo Grossoの大沢伸一氏、Dumb Typeの古橋悌二氏など、メンバーなど個人ベースのつながりでシーンが形作られていたようだ。
当時、彼らは田中氏のオーガナイズしていたイベント「Sound Impossible」でVJの草分けのようなパフォーマンスをしていたところを、ピチカート・ファイヴの小西康陽氏に見いだされ、グループのツアー用映像を手がける様になる。それが1993年で、それを結成時期としているようだ。「デザイン集団」とは聞き慣れないが、「個人名を出さず、誰が手がけてもグルビ名義でリリースする」ことから、そう位置づけているようだ。
Pizzicato Five - Lesson 3003 part1(YouTube)
結局2001年、ピチカート・ファイヴが解散するまで、彼らは映像を手がける。お互いに、60年代趣味やモダンデザインに対する興味が共通していたので無理なくできたという。グルビには映画評論家でデザインをいっさい行わないメンバー、ミルクマン斉藤氏がいる。伊藤氏曰く、「膨大なアーカイブを持っていた彼がいたから、当時の映像はできたようなもの」とのこと。
ピチカート・ファイヴ「great white wonder」のグラフィックデザインを手がけた頃までは京都を拠点に、“新幹線便”を駆使して活動していたが、さすがにどうにもならなくなり1997年に活動の拠点を東京・目黒=MGRに移している。
8年ぶりの作品集
2000年に彼らは初めての本格的な作品集「GRV2000」を刊行する。だが、これは伊藤氏曰く「すごすぎて役に立たなかった」らしい。その後まとまって作品が紹介されたのは、広告批評のアートディレクションを担当した第1弾(2004年4月号)となり、それ以降作品集は刊行されていない。
GRV2000とは。。。
2000年当時の全仕事集。3つ穴のバインダーにナンバリング順に網羅した作品集、チャッピー作品集、音楽・映画・ファッション等のグラフィック作品集、映像作品集、用語集を綴じるようになっている。プレイステーションで再生できるモーショングラフィックのディスクがついた、超豪華版で2万円オーバー。確かに使いにくそう(笑)。
「僕たちは作品集が営業してくれるようなものなので、とても重要」ということで、着手したという。ところが、メンバーで議論しても一向に形になる気配がない。これは。。。。ということで、「原さんがつくってくれたのに、みんなで文句を言いながら進めよう」ということに。事実、原氏がほぼ単独で台割なども含めてまとめ、ようやく形になったものだ。
ちなみに、この作品集につけられたナンバーはGRV2914(ニクイヨ)。「ナンバーだけだと突き放した感じがあるじゃないですか。こういう語呂にはこだわるんです」と伊藤氏。ただ、こうして刊行物として形になるには相当の紆余曲折があった様子がうかがえる。
彼らの仕事から
レポートの後半は、彼らの最近の代表的な仕事と、それにまつわるエピソードを紹介していこう。
- 本格的なビデオの撮影ディレクションでの戸惑い
RIP SLYME - STEPPER'S DELIGHT(YouTube)
この曲は2001年のリリースだが、いわゆるカットアップ映像じゃない本格的なビデオ作品はこれが最初。その後、「FUNKASTIC」「楽園ベイべー」など手がけることになるが、グラフィックデザインの思考の絵コンテだと、「監督! 絵コンテがわかんないよ」「え? またセットチェンジ?」などなど、映像のプロとのやりとりは難しかったようだ。
- 使いやすいWebショップを〜100% チョコレートカフェ

100%チョコレートカフェのWebサイト
住岡氏によれば「苦労したのはWebデザイン」。オールFlashで構築されているが、在庫管理とフロントエンドのWebショップをどのようにつなげるか、また年齢層の幅広い明治製菓のカスタマーにとってどうしたら使いやすいWebショップになるかは、熟考を重ねたという。
- ポストスクリプト制作フォーマットとしてのチャッピー
Chappie - Welcoming Morning(YouTube)
「Welcoming Morning」でチャッピーはバーチャルなアイドルとして1999年にデビューする。だが伊藤氏は「いずれ歌うだろう。割と自然なことととらえていた」という。ポストスクリプトの制作スタイルから生まれたチャッピーだったが、「実体が欲しい」という願望から等身大のマネキンなどが生まれる。「等身大にすることで、無限にパーツとして売られている洋服を使うことができる状況がおもしろかった」とも。
- 最近のプロモーションビデオ作品から
Fantastic Plastic Maschine - don't you know、HALFBY - Slip On(ともにYouTube)
一方、右はHALFBY「Slip On」で2007年の作品。ポストスクリプトな制作を一段階進化させて、住岡氏お得意の俯瞰目線でのグラフィックとなっている。ビデオに登場する様々なキャラクターやエレメントは膨大なパーツを組み合わせた「GRV2283」をベースにしたもの。一連のHALFBYのビデオ、路上でアニメーションを真似て撮影したものがYouTubeなどで人気になるなど、いわゆる“オシャレ文脈”以外でも人気があるのだとか。
音楽以外の仕事が増えてきた時期の集大成
ピチカート・ファイヴをきっかけに台頭し、「渋谷系」のイコンのように語られたグルビ。実際に伊藤氏は「莫大なアーカイブの知識をもとに、渋谷系のトーン&マナーでデザインすることは知的な遊びでおもしろかった」という。だが同時に「それだけではなかなか満足できるものが作れなくなってきた。そうして“音楽以外の仕事”が増えてきたとき、作品を生み出すのに時間もかかるようになった」のだとも。「GROOVISIONS MGR」はそんな彼らの一時代を切り取ったドキュメントと言えそうだ。
質疑応答では、彼らが重用するフォント「ヘルベチカ」についてのおもしろい話も。ヘルベチカと聞けば、スイス派を祖とするヘルベチカフォントの影響をイメージする。でも伊藤氏によると、1980年代にマンチェスターのファクトリー・レーベルやペット・ショップ・ボーイズの関連でたくさんの作品を残した、マーク・ファロウ(Mark Farrow)の“ヘルベチカ遣い”に影響を受けたとのこと。彼らの音楽趣味からすると、「なるほど!」と一つ謎が解けた瞬間だった。
関連リンク
GROOVISIONS
GROOVISIONS MGR(Amazon)
GRV2000(Amazon)
Hiroshi Ito_blog(honeyee.com)
京都クラブメトロ
FPMNET [Fantastic Plastic Machine official site]
Shinichi Osawa Official Website
dumb type website
ピチカート・ファイヴ(Wikipedia)
RIP SLYME OFFICIAL HP
STEPPER'S DELIGHT(Amazon)
FUNKASTIC(Amazon)
楽園ベイべー(Amazon)
Hacknet
安岡洋一/YASUOKA YOICHI インタビュー(ACROSS)
Wonderwall Inc.
明治製菓:100%チョコレートカフェ
Chappie Welcome Morning
HALFBY
ヘルベチカ(Wikipedia)
FARROW
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