遂に3つの主要CGソフトを手中に収めたオートデスク。このことがもたらす業界への影響と今後の展開について、ユーザーたちの意見も交えながら考えてみたい。
買収におけるオートデスクの狙い
先月末、ある1つのニュースがCG/映像業界に衝撃を走らせた。読者諸兄の中には既にご存知の方も多いと思うが、オートデスクがアビット・テクノロジーより、同社のソフトイマージ事業をおよそ3500万米ドル(約34億円)で買収したのである。3年前の同じ頃、エイリアス・システムズを買収したオートデスクだが、今回の買収により、映像コンテンツ向けCGソフトウェアの主要3ソフト(Maya、3ds Max、XSI)を手中に収めたことになる。
旧ソフトイマージ社は86年にカナダのモントリオールに拠点を置き、映画制作を中心にCG技術を提供することからスタートした会社だ。特にSOFTIMAGE 3D(後のXSI)は、当時IKやボーンを使いキャラクターアニメーションができる唯一のソフトとして、10~15年前のハリウッドでは、全スタジオが導入していたと言っても過言ではないほど高い支持を受けていた。
その事業価値の高さから、94年にマイクロソフトに買収されたのだが、その後の開発に時間がかかってしまったため、その間に登場したPower Animator(後のMaya)に映画VFXの世界では乗り換えが進んでしまった。その後、アビットがM S 社より買い取り、SOFTIMAGE|XSIが完成すると、ゲーム開発との相性を鑑みた設計が行われるようになり、現在ではゲーム会社を中心に確かな支持を得ているのはご存知の通り。
対してオートデスクは、3ds MaxとMayaを保有し、両ソフトによって映画や建築(プロダクト)、CMなどの映像コンテンツ分野で圧倒的なシェアを築いている。そこで、ソフトイマージの持つ技術と製品を取り入れることはもちろん、経験豊富な開発チームのメンバーを採用することで、オートデスク製品を補完し、他の追随を許さない地位を築いていくというのが今回の買収の狙いだろう。
実際に、オートデスクは今回の買収に関して、自社の既存技術とソフトイマージの技術を組み入れることで、将来的にはゲームや映画、TV番組制作用の次世代リアルタイム・インタラクティブ3Dオーサリングツールの実現を目指すとの声明を出している。
期待と不安が交差する現場クリエイターの本音
今回の買収によりオートデスクはエンターテインメント系CGの分野で寡占的な地位を築いたと言えなくないわけだが、CG制作者は今回の買収をどのように受け止めているのだろうか。
そこで、CG制作スタッフ50名に簡単なアンケートを行なったところ、約55%の人が「今後CG/映像制作に影響が出てくる」と回答した。もちろん、「ない」と答えた人の中には、「すぐに影響は出ない」や「現在ソフトイマージ/オートデスク製品を使用していないから」といった声も多いため、将来的なことを考えると、潜在的に影響があると考えている人はかなりの数に上ると思われる。
もちろん一方では、「エイリアス買収の時も大きな影響はなかった」と過去の経験から影響はないと答える人もいた。では、具体的にどのような影響が考えられるのだろうか。「ソフトの統合への期待/不安」や「価格の上昇/下落」、「競争力の低下に伴う開発の遅れ」などの意見が多く、期待と不安が入り交じった心境を吐露する結果となった。

CG制作スタッフ50名へのアンケート結果
そこで、期待と不安に対する割合を見てみると、なんと64%が期待と答え、今回の動きを支持する傾向にある。一方で、「ソフト間の互換性や操作方法の共有による作業効率の向上には期待するが、各ソフトの特性はそのままに開発してほしい」といった声が多く、操作性の向上など技術の進化に期待する反面、ソフトに対しては統合や大胆な路線変更を懸念する声が多い。不安と答える人の多くにも前述したような「競争力の低下による開発の遅れ」に集中しており、期待と不安が隣り合わせにいる紙一重な状態だということが伺えた。
確かに、エイリアス・システムズとソフトイマージがオートデスクにはない技術(MotionBuilderやSOFTIMAGE FaceRobotなど)を持っていたことは買収するにあたり非常に魅力的であったはずだ。問題は、これらの技術を全て手に入れた後、本来ならば技術を競い合って業界が発展していくのが他業界でも常だが、1社の元でどのような開発を進めていくかである。また、既にソフトイマージ製品の統合も考えられており(CATを3ds Maxへ)、より絞った開発が進められていくことが予想される。
このようなユーザーの意見に配慮してか、オートデスクは買収完了後もMayaや3ds Max、XSIの提供を続け、ユーザーの選択肢を狭める予定はないとの見解を示した。CG/映像制作者とってより良い制作環境の提供に意欲的なオートデスクだが、改めてその手腕が問われていくことになる。
関連リンク
このエントリーをブックマークする
このエントリーにトラックバックする
このエントリーのトラックバックURL
http://withd.jp/mt/mt-tb.cgi/3095
CGの新着記事
2009.06.22
MV界のキング・オブ・キングが大集結
2009.06.19
お手軽Web3Dメイキング 〜カエル作りで基本にかえろう〜
2009.06.15
CGプロダクションがB2Cサービスに挑む「DRAWIZ/ドロイズ」
2009.06.12
映画『20世紀少年』メイキング
2009.06.12







