2008.12.05

デジタル映像制作における マスターモニタの役割とは

イメージ:デジタル映像制作における マスターモニタの役割とは

日本画質学会 第16回研究会
Editer's EYE ♯9

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映像の高解像度化そして、ディスプレイの薄型化が進む一方で、依然としてCRT頼みのマスモニ。地デジへの移行が進む今、改めてマスターモニタの存在意義を考えたい。

ディスプレイの進化過程で生まれた思わぬ誤算

11月7日、日本画質学会が、「次世代マスターモニターを考える」という興味深いテーマのシンポジウムを開催した。本シンポジウムは、映像表示デバイスの薄型化が急速に進む中、映像制作の拠り所となるマスモニもCRT(ブラウン管)からFDP(薄型パネル)への変更を余儀なくされている現状を踏まえ、制作現場における問題点の報告と、マスモニを開発しているメーカー各社の最新開発状況の発表を通じて、ユーザーと開発者側の相互理解を深めることを目的としたもの。

当日は2部構成で行われ、第1部では、ユーザー側の現状報告として、アニメ、テレビ、映画の制作に携わる各社エンジニアによる発表が行われ、続く第2部では、最新のマスモニ開発動向を探るべく、パナソニックやソニー、池上通信機といったディスプレイ・メーカー5社による、新製品を例にした各社の開発戦略が発表され、始終白熱した論議が繰り広げられた。

日本画質学会 第16回研究会
当日は、マスモニ・ユーザーとメーカー双方から約50名が参加。
休憩時間には、各社がデモ展示した最新ディスプレイを熱心に見定める姿が印象的だった

昨年あたりから11年7月のアナログ波停波に向け、急ピッチで薄型化・大型化が進んでいるディスプレイ開発。一方、映像制作の現場では、アナログ時代を知らない若手スタッフが増えてきた。これら、ディスプレイの薄型化と映像コンテンツのデジタル化が、実はマスモニに対して思わぬ逆風を起こしている。俗に言う、「マスモニ不要論」の台頭だ。

これは、実作業を担うアーティストたちを中心に、デジタル化でモニタの個体差が少なくなった→ディスプレイの薄型化に加え、大型化が進む(マスモニの割高感が強まる)→メーカー各社の努力でテレビの描画力も向上した→民生テレビで十分なのでは? という認識が広まっているということ。

さらに、FDPは進化途上であり、アナログ時代のBVMシリーズに匹敵するような業界標準機が未だ登場していない。ここに、上述したようなアナログ時代からの業界慣習を知らない制作者が増えたことから“マスモニ軽視"の動きが生まれたわけだ(読者諸兄の中にも心当たりがある人がいるのではないだろうか?)。

まずはマスモニの意義を改めて啓蒙すべき

フラットパネル化の過程の中で、未だFDPには、かつてのソニーBVMシリーズ(79年の発売以降、圧倒的なシェアを誇ったCRTマスモニ)に匹敵するマスターモニタが誕生していないため、この空白の間に“マスモニ不要論”が広まってしまったと言える。今回のシンポジウムでは、そうした風潮に対する懸念の声が複数聞かれた。

テレビ業界を代表して発表した(株)NHKメディアテクノロジー/坂口信氏は、「マスモニには、映像にノイズがないか、信号基準を満たしているかといった判断ができる、『精確さ』が求められます。そのため、色も明るさも素直な表現でなければいけません。マスモニは“素晴らしいテレビ”ではないのです」と、マスモニは映像信号を測定する原器であることを改めて訴え、マスモニ不要論に警鐘を鳴らした。

同じくアニメ代表を務めた(株)プロダクション・アイジー/安芸淳一郎氏は「時々『視聴者はマスモニで見ないからテレビで制作すれば良いのでは?』と聞かれますが、テレビは各製品ごとに独自の画像エンジンを採用しているため、同じ映像でもメーカーごとに全く異なる色味で表示されてしまいます」と、現在のテレビはマスモニ画質から離れすぎていることを指摘し、テレビを基準に映像制作を行う危険性を力説していた。

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(右から)座長を務めた秋山雅和氏/日本画質学会副会長
パネラーを努めた安芸淳一郎氏、堀口 信氏、石井亜土氏/(株)IMAGICA

両氏の意見の裏には、ディレクターやアニメーター等のいわゆる実作業を行うスタッフの「マスモニ対する理解の低さ」がある。まずは、FDP時代のBVMの登場を待ちつつ、映像業界全体でマスモニの存在意義の啓蒙を行い、その上で個人や小スタジオでも遵守できる制作ガイドラインを確立していくべきだろう。

また、今回のシンポジウムでは、誌面の都合で割愛したが、クロスメディア時代特有の問題点も浮き彫りにされた。

映画とテレビでは視聴される画面サイズが異なるため、現場で映像チェックする際にも、テレビなら一般家庭のリビングにある32~42インチ程度で事足りるだろうが、映画の場合は50インチ以上が理想。つまりマスモニに求める仕様が変わってくるわけだ(そのためパナソニックでは、マスモニ開発をデジタルシネマ向けに特化して、表示サイズで優位性のあるプラズマにて行なっている)。

また色温度であれば、映画と北米のテレビはD65が基準なのに対し、日本はD93のため、同一作品でも国内と海外で環境を切り替える必要がある。DTV黎明期から指摘される、RGBのYUV変換についても引き続き課題が残っている。いずれもガイドラインを策定する際に考慮すべき事項だ。これを機に、本誌でも映像制作における色管理を考えていきたい。

(月刊CGWORLD/沼倉有人)

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