映画『パコと魔法の絵本』のクライマックスでは、実写の役者をフルCGキャラに変身させ、さらに両者をカットバックさせるという画期的な表現が登場する。

©2008「パコと魔法の絵本」製作委員会
これまでの日本映画では考えられないクオリティと物量に挑んだと語る、エグゼクティブCGディレクター増尾隆幸氏に本作のCG制作を尋ねた
高い難易度と膨大な物量
『パコと魔法の絵本(以下、パコ)』は、CMで培った極彩色の映像美とダイナミックな演出に定評ある中島哲也監督の最新作だ。本作の要となるのが、登場人物が劇中の絵本に登場する水辺の生き物たちに扮する様をCGで描いた一連のキャラクター表現である。
この表現を手掛けたのは、ルーデンス。中島監督とは、00年のACCグランプリを獲得したサッポロ黒ラベルのCM以降、大半の中島作品のCGを手掛けている。監督から厚い信頼を置かれているルーデンスであるが、本プロジェクトは生半可なものではなかったと、増尾氏はふり返る。

エグゼクティブCGディレクター 増尾隆幸氏
「『下妻物語』、『嫌われ松子の一生』と、CGを担当してきましたが、両作とも撮影されてきた実写素材に後からCGを加えていく流れでした。一方、『パコ』はCGが主体なので、プリプロから我々が率先して演出プランや制作手法を考え、提案していく必要がありました。やり甲斐と同時にプレッシャーもありましたね」。
さらに『松子』では制作カットは80強だったのに対し、本作では200強と、約3倍の物量を手掛けることに。フルCG作品ではなく、実写映画の座組みの中で、20人規模のCGプロダクションがCM等の短期プロジェクトを掛け持ちながら制作していく。およそ現在の邦画VFXの基準で考えると物理的に不可能なプロジェクトにルーデンスは挑んだのであった。

『パコと魔法の絵本』プロジェクト参加スタッフたち
そこで増尾氏は、長期でボリュームのあるCG制作を行うにあたり、システマチックにパイプラインを構築できるMayaをメインに構想。いわば定石を打った訳だが、実際に蓋を開けてみると日本の市場特性を踏まえたカスタマイズに迫られたという。
「中島作品では、システムの都合での言い訳など一切通用しません。監督が求めるクオリティに達するまでは何度でもリテイクが発生しますし、撮影事情によってプリプロにおける想定と異なってきたりします。規模や予算に相応の余裕があれば事情も変わりますが、日本の業界規模では限界がありますよね。したがい、作業フローとしては雑になるが、柔軟性の高いMaxにどんどんシフトしていきました」。

©2008「パコと魔法の絵本」製作委員会
画像提供:(株)ルーデンス
これは決して、MayaよりMaxの方が優れているといった類の話ではない。日本では、映画制作と言えども、予算や期間を鑑みると短期間で高いクオリティに仕上げるCM制作のノウハウを活かすのが有効な選択肢になり得るということである。
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