2006.10.06

東京ゲームショウ2006レポート ♯2

イメージ:東京ゲームショウ2006レポート ♯2

キャラクターズセッション
黒船来襲近し
カプコンが感じる危機感とは

今年10周年を迎えた東京ゲームショー(以下、TGS)来場者数は19万2千人を超え、出展社数・来場者数とも過去最高を記録と、なんとも威勢のいい結果報告だが、次世代機を軸にゲーム市場は本当にV字回復してくれるのだろうか。

そのカギのひとつであるPlaystation 3(以下、PS3)。SCE代表取締役社長兼グループCEOの久夛良木健氏による基調講演での「値下げ」宣言はさまざまな議論を呼んだが、元々の価格はまず北米で500

それはさておき、ゲーム市場やゲーム制作業界の今後という意味では、TGSフォーラムのキャラクターズセッションにおける株式会社カプコン 開発統括編成部 部長 竹内潤氏の講演内容にインパクトがあった。レポートの第2弾として、その模様をお届けする。

ゲーム業界の「ワールドカップ」。勝者は北米?

話は「今日はパンドラの箱を開けてみようと思います」という言葉でスタート。今年のTGSは5~7年に一度やってくる次世代機発売という“ゲーム業界のワールドカップ”のタイミングで開催された。今回のワールドカップの優勝者は誰でしょう?と会場に問いかけた竹内氏によれば、「優勝は北米」なのだという。


バイオハザード5のTrailer(YouTube)

というのも、日本市場では次世代機「Xbox 360」の出遅れと対照的に、Nintendo DS(以下、DS)発売以降、「脳をきたえる大人のDSトレーニング(以下、脳トレ)」をはじめ、ライトユーザーをターゲットにしたゲームが市場の牽引役になっている。コアユーザー向けタイトルでますます失敗ができなくなった各社は定番のシリーズ化を進め、一方でオリジナルタイトルは売れないという「売上げの2極化」が進んでしまっているからだ。

日本のデベロッパーは引きこもり?

以前は「洋ゲー」と呼ばれ、ある種特別な目で見られていた海外のタイトル。今では日本のゲームを研究し、確実にその作りを変えてきている。日本のゲームを遊びつくした北米のクリエイター達は、日本の売りであった「丁寧で緻密なゲーム」までも学習している、と竹内氏は語る。

それだけならまだしも、「日本のゲーム開発の現況は海外に頼るしかない状態」と言うのである。それはなぜか。物理演算や映像処理の開発ツールは海外製品が中心。それらなしでは開発できない状況なのだ。日本にも優秀な技術者はいるのに、なぜこんなに北米と差がついてしまったのか?

竹内氏が指摘したのは、「協働意識をもたない日本のデベロッパー姿勢」。北米は人材の流動が激しく、職人的な存在であればフリーランスでも十分に活躍できる環境がある。人材の流動化とオープンソースな文化が、北米の技術開発を支えているのだ。日本はというと、どちらかといえば引きこもっていっているように思われるのだという。

「脳トレ」の成功がもたらすもの

冒頭でも述べた「脳トレ」の成功は、ローリスクハイリターンを狙えるということを証明した。しかし、制作コストをかけずに携帯ゲーム市場のソフト開発を狙う、という流れも生み出してしまっている。次世代機のゲーム開発費の高騰とは逆に、一部で開発費の縮小という現象につながっていく。


ロスト プラネット エクストリーム コンディションのTrailer(YouTube)

「脳トレ」ヒットの鍵とは、緻密で大掛かりなプロモーションにある。そこには目を向けず安価な開発費のみに注目した“脳トレ クローン”たち。そんなゲームは、ローリスクローリターンにしかならないと竹内氏は言う。ゲームの仕様が変わってもなかなか上がることはない開発費の相場を考えると、「脳トレ」以降はその開発費に見合ったレベルのゲームしか作れなくなってしまう。それが日本のゲーム制作業界の縮小につながってしまうのではないか、というのである。

そんな日本の状況に反して世界のゲーム市場は伸びている。なぜ日本のゲーム会社は海外へ目を向けないのか。海外のマーケットがわからないから?そうやって日本がモタモタと躊躇している間に、黒船はやってくる! と竹内氏は言い切る。

我々は今何をすべきか?

巨大ヒットを連発する海外の市場の勢いは、既に無視できないものとなっている。「HALO」、「HALO2」の売上は共に500万本以上。「Grand Theft Auto」シリーズは累計1000万本オーバーの驚異的なタイトル販売数を記録しているのだ。


Grand Theft Auto ⅢのTrailer(YouTube)

「ファミコン時代の負の遺産=洋ゲーアレルギーを持った日本のままではいけない」と竹内氏。しかしながら、日本のユーザーにFPS(First Person Shooting Game)が受け入れられるのかどうか。100億円を超えるケタ違いの潤沢な開発費を投入する価値観と勇気の必要性。FPSを作るノウハウを持っていない日本…。道は険しい。

だが、竹内氏はそんな日本の状況をチャンスだと言う。「ゲーム制作業界の皆さんが、今この日本で肌に感じているゲーム市場の現状は事実です。海外向けという観点だけではない、本当の意味で世界に通じる技術的基礎体力をつけることが大事です。次世代機への移行期である、今こそチャンスなんです」、と。

そして、ゲーム制作業界が横断的に作る「日本製共有エンジン」の必要性を挙げ、最後に「知らないことは学べばいい!それだけのこと」と場を締めくくった。

セッションを終えて

次世代機バトルでのWiiへの期待感や、Nintendo DSの躍進を見ると、ライトユーザーへの訴求を徹底して進める任天堂の手法が日本においては成功を導くように思える。ただグローバルな視点で見ると、それはゲーム制作業界の体力を地盤沈下させることにつながりかねない、との竹内氏の指摘には危機感が感じられた。

アニメやゲームは日本が誇れる輸出品、と言われて久しいが、圧倒的に巨大なマーケットである海外への対応を見誤ると大きく衰退する可能性もある。その為には、いみじくも久夛良木氏が言った「Web2.0的な集合知でのゲーム開発」を考えるべきタイミングなのかもしれない。

株式会社カプコン
開発統括編成部 部長 竹内潤氏プロフィール

1991年入社。「バイオ ハザード」「バイオハザード2」ではチーフデザイナーと武器全般のデザイン監修を担当。また「鬼武者」ではディレクターを、「鬼武者3」ではプロデューサーを務める。現在、Xbox 360「ロスト プラネット エクストリーム コンディション」とXbox 360/PS3「バイオハザード5」のプロデューサーを兼任。

(デジタルスケープ 中路真紀)

関連リンク

東京ゲームショウレポート一覧
東京ゲームショウ
TGSフォーラム キャラクターズセッション
株式会社カプコン
脳をきたえる大人のDSトレーニング
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B000062YCY
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FPS - First Person Shooting Game(Wikipedia)

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